LEDヘッドライトは自身の熱で雪を溶かすことができるのか?
純正ハロゲンバルブからHID、あるいはLEDにアップグレードする際に、積雪地域ではランプユニットに付着する雪の「解けにくさ」を懸念する声が聞かれます。
そこで、ランプユニットや放熱板の表面温度を計測器を用いて実測し、点灯後の昇温特性と降温特性(熱しやすさ、冷めやすさ)をLED、HID、ハロゲンで比較してみました。
さらに、実際にフォグランプユニット(筐体)の上に雪を載せた状態で点灯開始し、雪が解けるまでに要する時間やその状況についても、LED、HID、ハロゲンで比較しましたので報告します。
実験をしたのはこちら
みんカラニックネーム:調布市のKAZ
クルマ、バイク、建築などDIY好きです。「他社純正品の流用」や「無い物は自作する」など、コストをかけずに工夫する主義のプライベーターです。
趣味は器械体操。年に一度の社会人向け全国大会にも連続出場中です。
結果の概要
スバル・エクシーガに標準装備されているフォグランプユニット(HB4型)について、消灯からスイッチON(点灯状態)を40分間キープしたとき、および続けて点灯からスイッチOFF(消灯状態)を20分間をキープしたときに、ガラスレンズの表面温度が、時間の経過とともにどのように推移するかを計測しました。
計測結果の一例として、外気温度が0℃前後の環境下にて、放射温度計で計測したときのグラフを示します。
- LEDは点灯開始後、約5分で温度上昇が鈍り、 推移安定後のガラス表面温度は最大で12℃でした。
- ハロゲンは時間の経過とともに なだらかに表面温度が上昇し、40分間で約60℃の上昇幅でした。
- HIDは点灯開始から約10分間まではハロゲンと同様な温度変化を示しましたが、それ以降は表面温度は約40℃でサチュレート(飽和)しています。
LED、ハロゲン、HIDとも、消灯から約20分間が経過した時点で、ガラス表面温度は外気温度とほぼ等しくなるまで低下しました。以上より、放射温度計での計測結果(@外気温度は約0~2℃)として、次のことが言えると考えます。
「LEDは点灯による温度上昇は約10℃に抑えられており、その温度に達するまでの時間も短い」 「HIDは点灯後、ハロゲンとほぼ相似形の温度上昇推移を示すものの、最高温度で21℃の差がある(ハロゲン:62℃、HID:41℃)。LEDとの差も大きく、どちらかと言うとハロゲン寄りの温度傾向を示す」 「ハロゲンは温度がサチュレートするまで、また消灯後に雰囲気温度まで冷めるまでの時間も長い」 |
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なお、同じガラスレンズであっても熱電対による計測結果や、ガラスレンズ以外(LEDの放熱板など)の表面温度の計測結果の詳細については、後述します(max温度は下表参照)。また、フォグランプユニット(筐体)に雪を載せた状態で点灯させたときの状態変化(溶けるか/溶けないか)についても、後述します。
結果を踏まえ私からの提案
まったくの私見ですが、今回の結果を基に、fcl.さんの今後の販売戦略として例えば次のような
アプローチがあっても良いのではないか?と考えます。
「バルブの着せ替えの提案」
- 春、夏、秋は色の選択が可能なLEDで。冬は雪も溶かせそうなHIDで。複数のバルブを使い分け。季節やシーンに応じたバルブの着せ替えを、DIYに敏感なユーザー層に提案・訴求する案。
「オールシーズン・ベストワンの提案」
- アクティブなユーザー層に対しては、オールシーズン、これ1本でいけるHIDをお勧め。(都心在住で冬にスキーレジャーをするような方々向けへの提案) あるいは
- 積雪に無関係な地域の層に対しては、取り付けが手間いらずのLEDをお勧め。(オールインワンのLEDなら、取り付け簡単で純正置換が可能)
冬期にサマータイヤからスタッドレスに交換して降雪対応をするようなユーザー層に対しては、「ライトのバルブも季節によって換えてみる」、というスタイル(カーライフ)の提案があっても良いのでは、と考えてみた次第です。
実験方法
車両および供試品について
今回、各バルブの昇温&降温特性(※)を把握するために使用した車両や計測器の情報は、次の通りです。
- 昇温特性(熱しやすさ):
スイッチONで点灯してから各部の表面温度がほぼ一定になるまでの傾向
- 降温特性(冷めやすさ):
スイッチOFFで消灯してから各部の表面温度が冷めて落ち着くまでの傾向
供試車両
スバル・エクシーガtS(YA5E型、2012年式2000ccターボ車、純正フォグランプHB4型を標準装備)です。なお、車載バッテリーはパナソニックCAOS 100D23L(2017年8月6日から使用開始、経過6ヶ月)です。
<↓スバル・エクシーガ(フロント全景と純正フォグランプの装着位置。計測は左フォグランプユニットで実施)>
比較バルブ
純正ハロゲンの立ち位置に対して、fcl.さんのLED、HIDのそれぞれで測温を実施して相対比較しました。
- 純正ハロゲンフォグランプHB4(ライン装着品、12V_51W(55W)ホワイト)、Assy部品コード:84501A
LEDヘッドライト/フォグランプ
(H8/H9/H11/H16,HB3,HB4)
ホワイト・イエローから選べる!
※記事内では前モデルを使用しています。現在は後継モデルを販売中です。
HIDコンバージョンキット 35W
(H1,H3/H3C,H4 Hi/Lo,H7,H8/H11/H16,HB3,HB4)
計測器具について
フォグランプユニットの表面温度を数値で把握するための計測器として、「熱電対(接触式温度センサー)」および「放射温度計(非接触式温度センサー)」の2種類を用意しました。以下、それらの計測器の画像を順に示します。
そのほか、関連する周辺機材や構成についても示します。
温度センサー
- 熱電対:K線、φ1.6(測定範囲 -200℃~+1000℃)
- デジタル温度表示ユニット:TF1(キーエンス、DC12V駆動、熱電対をダイレクトに接続可能)
- 放射温度計:IT-540NH(堀場製作所、測定範囲 -50℃~1000℃、両端レーザーマーカー付き)
関連する周辺機器
関連する周辺機器については、型番や製造メーカーのほか、今回の適用目的も併記します。
- 全自動バッテリー充電器:OP-0002(オメガプロ、車載バッテリーの出力電圧を安定供給させるため)
- コードリール(ドラム):S-30N型(畑屋製作所、100V電源を上記バッテリー充電器に印加させるため)
- AC-DCコンバータ:BC-12DC/BK(ブライトンネット、キーエンスTF1への常時電源供給器として)
- ソーラー電波時計:WVA-M630B-3AJF(カシオ、wave ceptor MULTIBAND6、ストップウォッチとして)
(※その他の構成機器の詳細については、巻末のサービスデータを参照願います。)
全体の構成
電源系は、家庭用100V電源からコードリールを経由して
- バッテリー充電器→エクシーガの車載バッテリーへ
- AC-DCコンバータ→デジタル温度表示ユニットへ
温度センサー系は、
フォグランプユニットに対して
- 熱電対→測温対象部位の表面へ貼り付け
- 放射温度計→測定対象エリアがφ30mm程度のスポットとなるように、ターゲット距離を狙います(右画像を参照)。
(∵取扱説明書に従い、測定対象物の大きさに 対する測定径の比を2倍以上確保するため。)
次ページに、エクシーガに計測器および周辺機器をセットして、各部表面温度を実測するための準備が完了した状態が分かる画像を参考として載せます。
温度の計測部位について
LED、HID、ハロゲンのそれぞれについて、具体的な温度計測部位とその状態を以下に示します。三者で共通の部位は、実車走行状態にて雪が接することになるであろう「フォグランプのガラスレンズ下部」とし、それ以外の計測部位については、それぞれの仕様で特有または特徴的な部位(例:熱源)を選定しました。
計測部位
- フォグランプのガラスレンズ下部 (熱電対)・・・LED、HID、ハロゲンとも共通
熱電対の先端(温度センサーの感応部)をガラスレンズの表面に密着させるため、銀テープを使用しました。銀テープは熱電対を固定するだけでなく、各バルブがスイッチONで発光した際に受光部としても機能します。
ただし、銀テープの面積が大きすぎると遮光範囲が広くなって、実使用時の温度傾向と乖離してしまう恐れも生じてしまうため、熱電対を安定して固定できる必要最小限の大きさになるよう配慮しています。
また熱電対の配線の固定方法についても、エクシーガのボディカラー(WRブルー)となるべく色温度を近似させるため、ガムテープも青色を使用(ガラスレンズ透過後の配光・反射に影響が出ないように)しています。
- LEDの放熱板(熱電対)
LEDの点灯時は放熱板が熱源となるため、車両の周辺部品に対する熱害影響が懸念されます。そのため、放熱板の表面温度を把握することによって、車両の周辺部品への影響有無を判断する際の材料にできると考えました。
その際、何層にも重なって構成されている放熱板の、最背面(車両の周辺部品に近接する部位)にするか?あるいは層内の中央部(熱が逃げにくく、温度的に厳しいと考えられる部位)にするか? を検討した結果、今回は後者で計測することにしました。熱電対の先端は画像では見えませんが、奥に差し込みしてあります。
- HIDのバラスト(熱電対)
HIDの点灯時はバラストも若干の熱を持つと予想し、バラストの表面温度レベルも把握することにしました。 測温部位は筐体の中央部です。材質は樹脂であるため、熱電対の先端(温度センサーの感応部)を銀テープでしっかりと貼り付けした上で、樹脂の表面と色温度を合わせるため黒色のガムテープで固定しています。
- ハロゲンのコネクタ部分(熱電対)
ハロゲンバルブでは、熱源であるフィラメント周辺が高温になりますが、その伝熱が裏側のコネクタ部分にまで及んでいるのか否か?が不明だったため、コネクタを形成している樹脂部も測温することにしました。
- フォグランプのガラスレンズ下部 (放射温度計)・・・LED、HID、ハロゲンとも共通
前述の通り、フォグランプのガラスレンズ下部については、熱電対だけでなく、放射温度計でも測温しました。放射温度計の場合、「測定対象物の大きさ(約φ76mm)に対する測定径の比を2倍以上確保する」ことが求められるため、目安として計測エリアがφ30mm程度となるよう、事前にレーザーマーカーでターゲット距離を確認してから現場での計測を行いました。
なお、当初は「放射温度計でガラスの表面温度を計測可能か(ガラスを透過してしまうのではないか)?」という疑問があったのですが、製造メーカーの堀場製作所の資料によると、「堀場の放射温度計は2.5μmより も長い波長の光を用いて計測するため、ガラスの表面温度は計測可能(>要旨)」ということが分かりました。
ただし今回の測温においては、熱電対と放射温度計では、次のような差異があることに注意が必要です。
- 熱電対:ガラスレンズの「スポット的な表面温度」を表示する。その際、「受光部として熱を受け取る銀テープ」とも接しながら表面温度をセンシングする。
- 放射温度計:「銀テープを含むガラスレンズ部分(約φ30mm)を、点ではなくエリアとして」温度表示する。
どちらが「正しい/間違い」というよりも、LED、HID、ハロゲンのそれぞれについて「互いに比較土俵を揃えた条件下で」「計測器ごとに、その測温結果を相対比較する」、というスタンスでデータを解釈したいと思います。
なお、1回の試行につき同時計測が可能な熱電対のチャンネル数は2ヵ所(熱電対の使用本数は2本)です。 したがって、放射温度計の併用により測温データは合計3ch分/回(同一ターゲットを含む)となります。
計測モードや計測条件などについて
誤差の少ない、安定した計測が可能となるよう、事前に計測条件や計測モードなどについて検討しました。その方針を列挙します。
環境や車両への配慮
- 環境に配慮し、フォグランプ点灯時の測温試験は、車両(エクシーガ)ので行います。(つまり排気ガスを出さずに温度計測を行います。)IG-ON(ACC電源ON)で実施した場合、電気負荷に対する車両保護制御が働いて強制IG-OFFとなってしまうため、エンジン停止かつIG-OFF(ACC電源をONにしない)状態で測温を実施することにします。(※エクシーガは、IG-OFF状態でもフォグランプの点灯が可能な車種=キーOFF非連動タイプです。)
エンジンを停止した状態
- 事前準備として、あらかじめエクシーガの車載バッテリをFULL充電させておきます。(フォグランプ点灯時、車両のその他の電気負荷は、フロントスモールライト(車幅灯)、テールライト(後尾灯)、ナンバー灯になります。)
- フォグランプ測温にあたっては、点灯中の車載バッテリーに対する負荷を考慮して「安定化電源」を追加します。「」車載バッテリーの供給電圧が一定ではない場合、フォグランプの発熱量(つまりは表面温度)も変動してしまうと考えられるためです。
全自動バッテリー充電器で強制チャージさせながら、測温を実施
計測モードについて
- 消灯からスイッチON(点灯状態)を40分間キープさせて、さらに続けて点灯からスイッチOFF(消灯状態)を 20分間をキープさせて、トータルで60分間をワンセット(1モード2ステップ)として連続的に測温します。「」
昇温特性40分間+降温特性20分間=トータル60分間
- 「昇温30分間+降温30分間」 の均等配分にしなかった理由は、プレサーベイにて、上り30分間では温度がサチュレートせず微増傾向にあることを確認し、逆に下りは比較的短時間で冷えることも分かったため、これをモードに反映させた結果です。
- 測温のインターバルは、温度の立ち上がり時は計測ピッチを細かく刻み、時間の経過とともにインターバルも長めに取るようにしました。昇温特性(ON)、。降温特性(OFF)、。
0~1分までは0.5分刻み、1~10分までは1分刻み
10~30分は2分刻み、30~40分までは5分刻みで計測
40~41分までは0.5分刻み、41~45分までは1分刻み
45~60分(終了)までは5分刻みで計測
計測条件について
- ・点灯開始時の外気温度を、低・中の2水準に振って計測します。「」これは、外気温度(フォグランプユニットがさらされる雰囲気温度)によって熱的な平衡状態が変化して昇温/降温特性が変わると考えられるため、その影響度合いについても把握したいためです。
OUTTEMP=早朝0℃狙い、昼間10℃以上狙い
- 実際には、天気予報で一日の最低気温/最高気温が狙いの条件に合致しそうな日に、測温を実施しました。測温の時間帯については、次の区分を目安としました。「」
早朝0℃狙い→AM6:00~AM7:00(約1H)、昼間10℃以上狙い→PM2:00~PM3:00(約1H)
- 車両駐車状態かつエンジン停止状態での測温については、ランプユニットが走行風で冷却されないため、走行時(実際のシチュエーション)の温度に対しては、今回の計測時の数値は高めに推移してしまう可能性があります。しかし、現実に対して緩めではなく厳しい条件で計測しておけば、少なくとも「」だとすることができる、と考えます。
得られた結果は、(その外気温度における)現実でのワーストをカバーできる値
発熱量
LED、HID、ハロゲンの三者の特性比較計測結果について
フォグランプのガラスレンズ表面温度について、熱電対による測温結果をfig.1に、放射温度計による測温結果をfig.2に示します(fig.2は表紙の再掲です)。なお測温時の外気温度は、いずれも0℃前後(@-2~+2℃)です。
ガラスレンズの表面温度は点灯開始後、LEDは約5分で安定し、HIDは約12分で安定域に入るのに対し、ハロゲンはサチュレートするまで約30分以上を要していることが分かります。
また、接触式の熱電対による測温結果は、非接触式の放射温度計による測温結果よりも高めに出ています。ただし、各計測点の「高~低」という相対関係(LED<HID<ハロゲンの順に高温となる)は不変です。
熱電対(fig.1)の方が放射温度計(fig.2)よりも高めの計測数値となった理由としては、
- 「スポットでのセンシング(熱電対)」と「エリアでのセンシング(放射温度計)」という違いがあること、
- 放射温度計では、銀テープとガラスの両方の材質をまたぐ形でのセンシングとなっていること、(光を透過するガラスよりも、光を透過しない銀テープの方が受熱・蓄熱しやすい)
- 放射率:金属である銀テープの表面に、黒体テープや黒体スプレーを塗布していなかったための誤差の可能性があると考えています。
なお降温特性(グラフで横軸t=40分以降の領域)からは、
- ハロゲンバルブの交換作業をする場合、たとえ外気温度0℃付近の冬場であっても、ガラスレンズ の表面温度が十分に低下する 「消灯後5~10分以上経ってから」 の作業開始が望ましい、と言えるでしょう。
具体的には、ガラスレンズ表面温度は消灯から10分の経過で20℃以下に低下し、20分の経過でほぼ外気温度並み(0℃付近)まで低下することを確認しています(夏場はさらに時間を要します)。
LEDでの温度特性 計測結果
外気温度を、0℃狙い(実温2℃)および同10℃超狙い(実温12℃)の2水準に振って、LEDバルブでの昇温/降温特性を計測しました。
Fig.3およびfig.4に、経過時間に対する表面温度の推移をグラフで示します。また、得られた結果を以下に箇条書きします。
- ガラスレンズの表面温度は、熱電対でも放射温度計でも計測差はあまりありませんでした。これは、LEDは照射方向への放熱が少なく、したがって温度の絶対値自体が小さいためだと考えます。
- 点灯時の外気温度が2℃→12℃(ΔT=10℃)に上昇すると、各部の表面温度もほぼ10℃に近い値で上昇しました。(実際には係数がかかるはずですので、外気温度差ΔTがそのまま単純に各部の表面温度差に上乗せされるとは限らない、と考えます。)
- 消灯後、放熱板の温度が十分に下がるまでには10分以上が必要です。
HIDでの温度特性 計測結果
外気温度を、0℃狙い(実温1℃)および同10℃超狙い(実温12℃)の2水準に振って、HIDバーナーでの昇温/降温特性を計測しました。グラフをFig.5およびfig.6に示し、得られた結果を以下に箇条書きします。
- ・ガラスレンズの表面温度は、熱電対では約60℃~80℃、放射温度計でも40℃~50℃に達しました。ハロゲンの場合ほどではないですが、意外に高温になる・・・という印象です。
- バラストの表面温度は、冬場の外気温度1℃~12℃にて20℃~34℃となりました。夏場は外気温が30℃程度になりますので、想像以上に高温となる可能性がある、と考えます。
- 耐久信頼性を確保させるという視点からは、バラストは車体振動の影響を受けにくい固定方法を採るだけでなく、なるべく走行風により冷却されやすい場所を選んで設置した方が良いことが、測温結果からも分かります。
ハロゲンでの温度特性 計測結果
外気温度を0℃狙い(実温-2℃)としたときの、ハロゲンバルブでの昇温/降温特性を計測しました。
経過時間に対する表面温度の推移をグラフをFig.7に示します。また、得られた結果を以下に箇条書きします。
ガラスレンズについて
- ガラスレンズの表面温度は、熱電対では90℃超、放射温度計でも60℃超に達しました。
- 熱電対での測温データ(90℃超)は、にわかには信じがたかったのですが、熱電対を固定している銀テープ自体が受光体として吸熱する作用があると考えられることから、「今回のセッティング」においては真値であろうと考えます。
(※熱電対と放射温度計とで計測値に差が出た要因については、(7-1) LED、HID、ハロゲンの三者の特性比較(11ページ)で既述の通りで考えています。)
樹脂コネクタ部分について
- ガラスレンズの表面温度は、熱電対では90℃超、放射温度計でも60℃超に達しました。
- 熱電対での測温データ(90℃超)は、にわかには信じがたかったのですが、熱電対を固定している銀テープ自体が受光体として吸熱する作用があると考えられることから、「今回のセッティング」においては真値であろうと考えます。
(※熱電対と放射温度計とで計測値に差が出た要因については、(7-1) LED、HID、ハロゲンの三者の特性比較(11ページ)で既述の通りで考えています。)
(※上記(外気温度-2℃条件下)にて、すでに表面温度が高く推移しておりますので、外気温度をより高めに振った状態での測温結果は割愛させていただきます。)
フォグランプに載った雪が 「実際に溶けるか?」 の検証
次に、フォグランプの筐体に雪が付着したときの状態を模擬して、「実際に雪が溶けるかどうか?」についても追加で試験を行い、現物確認しましたので報告します。
リアルワールドを想定し、「降雪によりフォグランプユニットに雪が詰まった状態からの点灯」を模擬します。
ハロゲン、HID、LEDのそれぞれについて、70g(密度:約0.5g/cm3)の雪を載せた状態から点灯開始し、所定時間ごとにガラスレンズの表面温度を計測しつつ、同時に雪が溶けるかどうかについても画像で記録していきました。
ここで表面温度の測温と画像記録のインターバルは、次のように設定しています。
- 点灯開始から10分後まで:1分間刻み、
- 10分後から20分後まで:2分間刻み、
- 20分後から40分後まで:5分間刻み、
- 40分後から60分後まで : 10分間刻み。
(※明らかに雪が溶け切ったと判断された場合は、途中で消灯状態に移行させます。また逆に、雪が溶けないと判断された場合も、60分経過以降は打ち切りします。)
以下、まずは測温結果のグラフから載せて、次に点灯開始からの雪の状態推移を記録した画像を載せます。
<↓フォグランプ筐体に70g(約140cc)の雪を載せた状態から点灯させたときの、ガラス表面温度の推移>
<結果>
- ハロゲンは点灯開始から6分経過後(@ガラス表面温度12℃)に雪が溶け始め、そのため20分後に消灯しました。
10分経過後(@ガラス表面温度40℃)にほぼ全量が水となりました。
- HIDは点灯開始から8分経過後(@ガラス表面温度6℃)に雪が溶け始め、そのため40分後に消灯しました。
16分経過後(@ガラス表面温度23℃)にほぼ全量が水となりました。
- LEDは点灯開始から16分経過後に外周部の雪がやや溶け始めましたが、そのため、60分後に点灯状態のまま試験終了(打ち切り)しました。
60分経過後でも雪が残っていました。
<ガラスレンズの表面温度推移に対するコメント>
- HIDにおいて、ガラスレンズの表面温度がいったん26℃(t=4分後)まで上昇したあと6℃まで下がる(t=7分後)理由は、昇温によりバルブ近傍の雪がいったん溶けたものの、溶けたことにより出来た空洞部分に上から雪が崩れ落ちることで再度冷やされたものだと推定します。
- LEDにおいても、ガラスレンズの表面温度に小幅ながら変動(6℃→2℃→6℃)が生じた理由も、上記HIDの場合と同様の理由(ただし、その変化は非常に緩やか)だと考えます。
<↓フォグランプ筐体を垂直に設置後、雪を載せて点灯し、その雪の画像を一定時間毎に撮影>
次に各バルブについて、点灯後の経過時間に対する融雪状況の比較画像(代表例)を載せます。
(※コントラストの都合上、発光部以外の周辺が暗く写っています。表中の「t」は 経過時間[分] を表します。)
まとめ
フォグランプのガラスレンズの表面温度の計測データと呼応するように、フォグランプユニット(筐体)に載せた雪の溶け方にも明確な差が生じることを、画像記録でも確認できました。
結果としては、
- ハロゲンとHIDは、点灯時の発熱により雪が溶ける環境にあると考えます。(ただし、外気温度と走行風の有無により、溶け方は変動する余地があります。)
- LEDは照射面側の発熱は小さいため、点灯のみで雪が溶けることは、ほぼ困難と判断します。
したがって、LEDでは降雪時の場合、適時ヘッドライトやフォグランプの筐体に雪が溜まらないように配慮する必要があると言えます。もちろん、ハロゲンであってもHIDであっても、車両のライトユニットに雪が付着した場合は、可能な限り除去しておいた方が安全につながることは、言うまでもありません。
「LED、HID、ハロゲンの各バルブで雪解けのしやすさを比較する」というテーマに沿って、今回は次の2項目の定量的な確認(測温試験)と検証(融雪試験)を進めました。
- 測温試験:消灯状態からの点灯後、ランプユニット(筐体)や放熱板の昇温特性を把握する。
- 融雪試験:各バルブの点灯後、ランプユニットに載せた雪が解けるかどうか実際に確認する。
結論と所見
<昇温特性について>
外気温度0℃付近から点灯させた場合、フォグランプのガラスレンズの表面温度として次の結果を得ました。
- LED(14℃)<HID(41℃)<ハロゲン(62℃):非接触式の放射温度計によるエリア計測値(max値)
- LED(17℃)<HID(67℃)<ハロゲン(96℃):接触式の熱電対によるスポット的な計測値(max値)
<降温特性について>
また、点灯後の各部温度がサチュレートした状態からの消灯では、外気温度0℃付近の条件下にて 安全に作業を開始できるまでの放置目安時間は、おおよそ次のようになります(夏場はさらに時間の延長が必要)。
- LED:ガラスレンズは即座に降温、放熱板は約10分間の放置が必要(53℃→22℃)
- HID:ガラスレンズは約5分間の放置が必要(表面温度が20℃程度になるまでに)
- ハロゲン:ガラスレンズ、背面の樹脂コネクタとも10~15分間の放置が必要(20℃程度になるまでに)
<融雪特性について>
外気温度12℃にて、フォグランプ筐体に70g(約140cc)の雪を載せて点灯させた場合、次の結果を得ました。
- LED:60分経過後でも雪が解けずに残りました。
- HID:点灯開始から8分経過後(@ガラス表面温度6℃)に雪が溶け始め、16分経過後(@ガラス表面温度23℃)にほぼ全量が水となりました。
- ハロゲン:点灯開始から6分経過後(@ガラス表面温度12℃)に雪が溶け始め、10分経過後(@ガラス表面温度40℃)にほぼ全量が水となりました。
雪の投入量や温度(または状態)変化量を詳細に追跡すれば、各バルブのガラス面における単位時間あたりの発熱量(概算値)も算出できそうですが、そこまでしなくても今回の目的は達成できたと考えますので、その点については割愛します。
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※記事内では前モデルを使用しています。現在は後継モデルを販売中です。
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記事について
- 商品改良の為、仕様・外観は予告なく変更する場合があります。あらかじめご了承ください。商品の仕様などは、モデルの変更に応じて、変わります。必ず最新の商品ページをご確認ください。
- 取付レポートに関しましては、あくまでも取付例となりますので、お車の年式、グレード、仕様によってバルブ形状、取付方法が異なる場合がございますので、予めご了承ください。
- HIDやLEDは高電圧を発生するため、取付けには大変危険を伴います。取付けの際は、バッテリーのマイナスターミナルを外し、ヘッドライトのスイッチをOFFにした状態で行ってください。
- お車のグレードや仕様によっては別途バルブアダプター、キャンセラー等が必要になりますので、予めご了承下さい。
- 記載の情報はあくまで一例となります。取り付けの際に起こった損害や、バルブ形状が異なるなどの責任は負いかねます、予めご了承ください。
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